アンケート調査の背景と目的
私たちヤマハ講師は一般財団法人ヤマハ音楽振興会(以下、財団とします)と業務委託契約を結ぶ個人事業主(フリーランス)です。しかし、本来ならば個人事業主として自由にできるはずのことを財団や特約店から指示され、個人事業主としての自由を失った「名ばかり個人事業主」の状態にあるのではないか、とヤマハ講師の働き方を疑問視する声が上がっています。
「本来ならば個人事業主として自由にできるはずなのに、財団や特約店から指示されていること」はいくつかありますが、今回はその中のひとつ、レッスンスケジュール(レッスンの実施日)にスポットを当てました。
私たち講師が財団から委託されているレッスンは、コースごとに年間のレッスン回数が決められています。その決められたレッスン回数をどのようにこなしていくか(どの日にレッスンをして、どの日を休みにするか)を決めるのは本来は講師であるべきですが、特約店によって自由に決められないケースがあります。
ヤマハ講師は契約上個人事業主ですので、社会保障や基本給がなかったり、労働基準法に守ってもらえないというデメリットがあります。その反面、自由に働くことができるという大きなメリットがあるのですが、自由に働くことができなければ個人事業主としてのメリットを失い、デメリットだけを被ることになりかねません。今回スポットを当てたレッスンスケジュールについて、講師が自由に決めることができているかを調査するのが、今回のアンケート調査の目的です。
レッスンスケジュールを講師自身で決めることができているか、またレッスンスケジュールについて財団や特約店に相談したときの対応などを調査しました。
ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。
選択式の質問は割合を、自由回答は回答のまとめのみ公表させていただきます。
レッスンスケジュールに関するアンケート
実施期間:2024年1月31日~3月31日
回答数:212件
講師区分
システム講師(主に子ども対象のエレクトーンやピアノの講師)ですか、
YML講師(ドラム、ギターなどのポピュラー楽器の講師)ですか
約8割がシステム講師でした。今回のアンケートはシステム講師の実態に近い回答となっていると推測されます。
現在のレッスンスケジュールについて
・レッスンスケジュールは自分で決めていますか
理想は「全て自分で決めることができる」という状況ですが、これは1割にとどまり、約7割が「ほとんど自分で決めることができる」との回答でした。ショッピングモールや幼稚園などの中に入っている教室の場合、休館日はレッスンすることができないため、特約店としても休講日として設定せざるを得ないなどの状況もあります。
一方で「全て特約店が決めている」というケースもあり、この場合は個人事業主としての自由な働き方ができていないと考えられます。
・現在のスケジュールの決め方に困っていること、不満なことはありますか
・ある → 困っていること、不満なことは何ですか(複数回答可)
回答者の約半数が「困っていること、不満なこと」がある、との回答でした。(困っていることや不満を抱えた講師が当ユニオンのアンケートに協力してくださるため、実態よりも高く出ている可能性があります。)
困っていること、不満なことの内容としては「講師都合で休む場合の振替がしづらい」との回答が多く上がりました。体調不良や冠婚葬祭などのやむを得ない休講でも難しいことがあり、「結婚式で休む場合は招待状のコピーの提出を求められる」などの声もありました。
「その他」の内容としては
・隙間なく(休憩時間がなく)レッスンが入っていて、食事や手洗いの暇もない
・年間レッスン回数に縛られて演奏活動が自由にできない
・レッスンを休講にできず、我が子の学校行事に参加できない
などがありました。
レッスンスケジュールの相談について
・レッスンスケジュールについて財団に相談したことはありますか
・レッスンスケジュールについて特約店に相談したことはありますか
約8割が「財団には相談したことがない」との回答でした。レッスンスケジュールのみならず、稼働する上で困ったことがあった時に、財団には相談できる窓口がありません。講師の抱える問題を解決するためにも、財団には困ったときの相談窓口などを開設していただきたく、当ユニオンから要望を出しています。
また、財団に相談した場合の解決率が低いことも問題です。財団は講師と特約店の間で問題が起こった時「当事者どうしでよく話し合って解決してください」というスタンスで、財団が問題解決に乗り出すことはほぼありません。私たちヤマハ講師が契約しているのはあくまでも財団であり、契約関係にない特約店とはまともな話し合いの場を持つことすら難しいケースもあります。講師から相談が来た場合は、真摯に対応し解決を目指してほしいと考えています。
一方で、特約店には約半数が相談しています。解決率も財団より高く、講師の希望に沿うよう動いてくれる特約店もあると思われます。しかし解決した割合よりも解決しなかった割合の方が多いことは財団、特約店共に同じで、「レッスンスケジュールを自由に決められる」という理想的な働き方はできていません。
稼働について面談の機会が設けられている特約店と、そのような機会が一切ない特約店があり、特約店による違いが色濃く出ています。新任の講師を育てるように稼働を組んだり、たくさんの生徒を担当するためにグレード(資格)を持っているなど、講師のやる気に応じた稼働を組んだりできるのが理想ではあります。しかし実際はただ空き枠に生徒を詰め込まれるだけでフォローもなく、稼働について相談できる場もなく孤独を感じる講師も多く、講師不足の一因になっている可能性もあります。
その他特約店、振興会への要望があればご記入ください(自由回答)
・レッスンスケジュールを自由に決められない 11件
・レッスンスケジュールをかなり先まで出すように求められる 3件
・レッスン時間に余裕がない 2件
・講師都合で休めない、振替ができない 2件
・体験教室の日程を一方的に決定される 2件
・他の仕事に影響がある 2件
・稼働日の調整に応じてもらえない 1件
・その他 4件
まとめと今後の展望
今回はレッスンスケジュールにスポットを当て、講師がフリーランスとして自由に働けているかを調査しました。
その結果、レッスンスケジュール自体はほとんど講師が決めることができているものの、講師都合で休講できなかったり、振替ができないなどの問題があることが分かりました。また、スケジュールについて財団や特約店に忌憚なく相談できる信頼関係の構築や、副業可能なフリーランスとして他の仕事との両立などに課題が見つかりました。
ヤマハ講師は財団と業務委託契約を結ぶフリーランスであり、フリーランスとして自由に働く権利があります。フリーランスなのに自由に働く権利を奪われ、一方でフリーランスだから社会保障がないなどのデメリットもある状態では「名ばかり個人事業主」と言わざるを得ません。私たちヤマハ音楽講師ユニオンは、このような状態を改善すべく今後も団体交渉を重ね、改善に向けて活動して参ります。
働き方に疑問・不満のあるヤマハ講師さんは、お気軽にご連絡くださいね。
メールアドレス ⇒ ymt.union@gmail.com
最後に、今回のアンケートにご協力くださった皆様、本当にありがとうございました。
ヤマハ音楽講師ユニオン
執行部
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